SHOP INFO

北欧と御代田の自然や文化を融合して生まれた “ここにしかない”出会いを創出するライフスタイルショップ

MMoPに点在する食やライフスタイルを提案してくれるショップのバックグラウンドやこだわりを深く掘り下げてご紹介する本企画。今回は、スウェーデンでデザイナーとして活躍した須長檀さんによる、北欧のエッセンスを感じるオリジナル家具と雑貨が並ぶ「lagom」を訪ねます。

MMoPの中でもひと際目を引くアートフォトが壁面に大きく展示された建物EXHIBITION棟の向かいに位置する「lagom」。オーナーで家具デザイナーの須長檀さんはスウェーデン生まれの東京育ちで、家具作りを学ぶため、スウェーデン・ヨーテボリの大学に留学したのち、ストックホルムにある王立美術大学KONSTFACKの大学院家具デザイン科に進学、長年北欧のデザインや生活に触れてきました。スウェーデン語で“そこそこ”という意味を持つ「lagom」の店内には、国内の作家と作るオリジナルの家具、スウェーデンのアンティーク家具、服や小物、アートフォトなどが並びます。

lagom オーナー・デザイナー 須長 檀さん スウェーデンでのデザイナー時代に〈2009年度 北欧4カ国の最優秀成型合板家具を選ぶNORDIC DESIGN AWARD受賞〉〈ELLE DECO SWEDEN の2010年度のYEAR OF FURNITUREに選出〉

 

ものをつくる喜びを少しでも伝えたい。それがひとつの基準

「ここをつくるときに最初に思い浮かんだのが、学生のときにミラノで見たイタリア人建築家兼デザイナー、アッキーレ・カスティリオーニのアトリエでした。ミラノサローネの期間だけ特別に公開されていたんだと思うのですが、さっきまで使っていたようにペンが置かれていたり、彼の生前の状態そのままに残されていて、そこには物をつくる喜びとパワーが溢れていて感動しました。となりで見ていた女の子が泣き出してしまったほど。その経験は、この店の空間づくりや物の選び方のひとつの基準になっているかもしれませんね」

モロッコをテーマにしたポップアップでは、カラフルなバブーシュやタイルラグを展示・販売。

店内では、頻繁に作家とのコラボレーションでポップアップの企画展示が開催されるのも「lagom」の特徴。撮影時にはモロッコをテーマにした展示の準備が行われていました。また店の奥の焼き菓子の工房「コムギとハカリ」では、ポップアップ企画と連動したお菓子も提供されています。店主の岸田怜子さんが一人で焼き上げるパウンドケーキやクッキーは、あっという間に売り切れてしまうほどの人気。

「先週のテーマはレモンでした。テーマをいただいてつくるのは、勉強にもなりますし、楽しいです。モロッコのポップアップのときは、甘くてスパイスの効いたお菓子になりそうです」。お菓子は食べる楽しさと同時に作る楽しさを知ってほしいという想いから、店でも人気のビーガンクッキーを一切の計量なしでつくれる手づくりセットも販売していて、こちらも好評を博しているそう。

店の奥にある焼き菓子工房「コムギとハカリ」。

小部屋に置かれたスウェーデンのヴィンテージテーブルの上に「コムギとハカリ」の小さな焼き菓子が並ぶ。擦りガラスから柔らかな光が差し込む。

須長さんが考えるのは、わざわざここまで足を運んでいただく意味。「ポップアップでは体験型の企画を数多くやりたいと思っていて、この後はシャツと帽子の展示&セミオーダー会が控えています。お客さまがつくり手さんと実際に話をして、採寸して、自分だけのものをつくり上げていく。そこにリアルショップの意義があると思うのです」。

クリエイターとアトリエスタの相互援助関係から生まれる作品にも出会える

須長さんは「RATTA RATTARR(ラッタラッタル)」のクリエイティブディレクターも務めています。これは、軽井沢にあるデザインとクラフトのブランドで、クリエイターである障がい者とその支援員としてのアトリエスタの相互援助関係で制作されるプロジェクト。松本市にある話題の宿「松本十帖」オリジナル浴衣や長野県立美術館のミュージムグッズなども製作しており、「lagom」にもそのプロダクトが並んでいます。

「RATTA RATTARR」プロジェクトの作品。
有田焼にクリエイター(障がい者)がデザインしたカップ ¥3,960

「カレーのパッケージデザインの依頼が来たら、普通はまずカレーを試食してからみんなで企画会議をして考えようと思うでしょう。でも、彼らは食べた瞬間に描き始めちゃう! イメージがすぐ浮かんじゃうんです。彼らの想像力に感化されてつくったのがこの鍋敷きです。あまりディテールに凝るというよりは、直感的に考えた形にしようと思って、軽井沢の森を守るために伐採された間伐材でつくりました」

2本の端材をクロスさせただけというシンプルな構造の鍋敷き。強度を増すために加えた小さな丸いパーツがアクセントになって使わない時も絵になる ¥1,200

都会からこの地に移住して12年。考えることとつくるものが重なってきた

東京で暮らしていた須長さん夫婦が、軽井沢に移住したのは12年前。軽井沢で暮らすようになって、考えることとつくるものが自然と一致してきたそうです。

「都会の暮らしと違って薪ストーブを使うためには薪を割らなくてはいけないし、夏は庭の草むしりもしなくてはいけないので大変ですが、すごく人間らしい生活ができます。日々の暮らしのためには、こんな道具も必要だなとか、あんなものがあるといいなという発想になるので、考えることとつくるものが暮らしの中で重なっていきます」

これは、東京に住んでいたら得られなかった発想。「今年の夏にはMMoP内に御代田写真美術館ができる予定なので、いまはフォトフレームをつくっているところです。デジタルの世の中にあって、写真を紙焼き(プリント)をする意味をもう一度考えてみたくて。しかも壁に掛けるのではなく、手に馴染むフォトフレームをつくる予定。あえて紙焼きをする理由を考えたときに、自分なら亡くなった家族やペットの写真をフォトフレームに入れるだろうし、毎日、挨拶をしたり声をかけたりするなら、きっと手に持ちたいはずだと思って」。

スウェーデンと日本のものづくりに通じる手工芸の魅力

須長さんが幼少期を過ごし、大学で学んだスウェーデンは店の商品ラインナップだけにとどまらず、ものづくりの思想にも大きな影響を与えています。

「世界的にすごく有名という人が少ないのであまり知られていませんが、インテリアや建築のナショナリズムの発祥は、実はスウェーデンなんです。北欧の近代建築を代表するアルヴァ・アアルト(フィンランドの建築家、デザイナー、都市計画家)にも影響を与えた建築家のグンナール・アスプルンド、機能的で質素なものに美しさがあることを提唱した思想家のエレン・ケイなど、北欧の建築やインテリアの核となる哲学を提唱し始めたのも、実はスウェーデンなんです。また、スウェーデン手工芸の魅力の一つは、つくり手がいい意味でアマチュアということもあります。社会福祉が徹底している国ですから、定年後に手工芸を始める人が多い。手工芸の文化がアマチュアに守られていて、美術工芸品にならないところに純粋性を感じます」

最後にオリジナルデザインの椅子「clouds」の紹介を。これは須長さんが子供の頃、大人の椅子にクッションを乗せて座ったときに、それはそれは心地よかった経験を思い出しながらデザインし、長野県安曇野市の作家・金澤知之氏がつくったもの。羽毛のクッションをふんわりと受け止め、浮かせるように支える土台のペーパーコードは、編み方を作家と一緒に開発したと言います。スウェーデンと日本のものづくりに通じる手工芸の魅力を感じる作品です。『lagom』では、ストーリーを持ったここにしかない逸品が、訪れる人との出会いを待っています。

「clouds」
制作:金澤知之(長野県安曇野)
素材:メープル、フェザークッション、紙紐
仕上:塗装
デザイン:須長 壇
サイズ:W48×D48×H77cm
価格:¥66,000

※価格は消費税税込

店舗情報

インテリア・雑貨

lagom  ラーゴム

住所:〒389-0207 長野県北佐久郡御代田町馬瀬口1794-1 MMoP内
TEL.:0267-31-0737

ペット:抱っこもしくはカートで入店可

営業時間:9:00~16:00
定休日:水曜日(年末年始は休業)

https://lagom-miyota.com/

Share :

  • Facebook
  • Twitter
  • Line