
じっくり選ぶバッグづくり—Ko’da styleのセミオーダー帆布バッグがlagomにやってくる

私たちは、「ゆっくり、じっくりと接客して、商品を販売したい」という思いを大切にしてきました。そんな私たちが魅力を感じたのが、自分好みのセミオーダーの鞄を作るという、「持ち主と作り手の親密な関係性」でした。今回、4月24日〜5月6日の期間に、lagomでは、「Ko’da style」の鞄を展示いたします。本記事では、Ko’da styleの魅力や、デザイナーのこうださんのものづくりへの想いをご紹介します。
今回の展示会でお披露目される新作についてお聞かせください。
新作の名前は「ペコ(peco)」。コロンと丸っこいフォルムがとてもかわいい形になりました。こうしてみると人懐っこい笑顔のようです。

サイド部分は厚い帆布、表裏には薄い帆布を使っています。厚さの違う生地を組み合わせるので、ミシン糸や縫い方、針まで変えなければならず、なかなか大変なのですが、その分軽さと形の安定感を両立できます。



金具も最小限にして、身体に触れる部分にはできるだけ金属パーツを使わないようにしました。実はストラップの通し方を変えると斜め掛けにもワンショルダーにもなります。しかも、すっきりと。実際に1月の展示会でお客さんからの反応もとても良かったです。どういう仕掛けなのかは、ぜひlagmoまで見に来てくださいね(在廊予定:4月25日〜29日)。
かばんのデザインやブランドのコンセプトについて教えてください。
私はずっと「帆布(はんぷ)」という素材に魅力を感じていて、革をほぼ使ってこなかったんです。よく「ハンドルだけでも革にしないんですか?」と聞かれるんですけど、どうしても革を縫うと「内臓を縫っている」ような感覚があって…。生理的にしっくりこなくて、これまで一切やりませんでした。
また、東急ハンズ(現:ハンズ)で10年ほど働いていたこともあり、「手の復権」という言葉が大好きでした。自分の手で作って、それをお客さんに直接届けることに喜びを感じています。今もセミオーダーメイドが中心で、色やハンドルの長さなどをお客さんと相談しながら決めています。
帆布は厚みがあるので、立体的な縫製が難しいのですが、それでも新しい立体感やデザイン性を追求して、毎年少しずつ進化しています。各モデルには「カバ」「エッグ」のように名前をつけていて、自分が生み出した子どもに愛称をつける感覚に近いですね。




毎回、新作を生み出すうえで意識していることはありますか。
かばんって「袋に取っ手をつけたら完成」みたいなシンプルな形だからこそ、デザインを大きく変えるのは難しいんです。だけど、その制約の中でどれだけ新しい発想ができるかをいつも考えています。
ヒントは散歩中にふと浮かんだり、家具の取っ手を見ていたり、単純に縫製でミスしたときの形に面白さを感じたり…本当にいろんなところから着想を得ています。重要なのは、それをコピーではなく、自分なりに解釈して表現すること。情報の受け手側が、スポンジをどれだけやわらかくできるか。どんなものにもいいところがあるので、絶対に否定はせず、またヒントを見逃さない、ということを大切にしています。
かばんづくりを始めるに至った経緯はどのようなものだったのでしょうか。
大学卒業後に家具屋に就職し、その後、東急ハンズで10年ほど働いていました。そこで仕入れや販売、マーケティングなどに関わり、「売れるもの」と「売れないもの」の違いを肌で学びました。
なかでも、当時自分が好きだったのがLL Beanのハンドバッグ。まだ日本の正規ルートがなく、並行輸入で買っていたのですが、自転車移動のときに持ちやすいように工夫したいと思ったのが、かばんづくりを意識する最初のきっかけでした。
また、海外から日本に帰ってきたときに「日本人って、みんなバッグを持っている!」と感じたのも大きかったですね。ポケットやスーパーの袋ですませる海外の生活と比べ、バッグ文化が根付いている日本に面白さを感じたんです。
その後、「須田帆布」さんとの出会いがあり、個人であってもかばんづくりができるかもしれない、という具体的なビジョンが見えてきて、独立を決意しました。
セミオーダーの魅力や楽しみ方を、展示会に来られるお客さまにどう伝えたいですか。
セミオーダーの最大の魅力は、「自分の好きな色や使い方を想像しながら、一緒に作り上げる」プロセスにあると思います。たとえば内側のポケットだけ別の色にするとか、ステッチをあえて目立つ色にするとか、ちょっとした遊び心を加えられるんです。

実際、はじめは「どう選んだらいいか分からない」と戸惑う方もいますが、2回目、3回目になると「ここはこうしてほしい」と具体的に要望が出てきて、お互いに楽しくなっていきます。
私は、お客さんが「自分の買い物」をじっくり考える時間を持てるのは、とても豊かな体験だと思っているんです。慌ただしく買うのではなく、「この色にしようかな」「持ち手の長さはどうしよう」と、店員さんと会話を楽しみながらじっくり選ぶ。そうした小売体験が減っていくとしたら、それはすごくもったいないことだと思います。買うという行為を“レジャー”にしてもらうというか、「自分のために選んで作る」過程そのものを楽しんでほしいと思っています。
これからKo’da styleが目指すものを教えてください。
私自身、かばんは「シンプルで控えめで心地よいもの」が理想です。最初はデザインが凝っていても、最終的にはどこまで削ぎ落とせるかを意識しています。ただ、削ぎ落としすぎると“個性”が消えてしまうので、そのバランスが難しいです。
とはいえ、ずっと作家性を出し続ければブランドは立つかもしれませんが、それが常にみんなが求めるものとは限りません。かばんはファッションの一部でもあるので、実用性やトレンドにも配慮しながら、自分らしい表現を続けていきたいと思っています。
「手の復権」という言葉を大事にし、“自分の手で作る喜び”をお客さんと共有したい。そんなKo’da styleさんのものづくりは、素材にも手間にも妥協しない姿勢が貫かれています。何年、何十年先も愛着を持って使えるかばんと、その場の対話や体験がセットになったセミオーダーの魅力は、一度触れてみるときっと忘れられないはず。
今回の展示販売会では、軽さと形の安定感を両立させた新作「ペコ」をはじめ、オリジナルな帆布バッグを手に取って見ることができるそうです。自分だけの組み合わせを考えながら、かばんが生まれる物語を味わってみてはいかがでしょうか。
展示会情報
展示名:Ko’da style Canvas Bag Exhibition
会期:2025/04/24〜2025/05/06(こうださん在廊予定:4月25日〜29日)
場所:lagom
住所:〒389-0207 長野県北佐久郡御代田町大字馬瀬口1794-1(MMoP内)