INTERVIEW

自然の中で文化的に暮らせる理想の町を
クラフトビールを基軸に実現したい

株式会社ヤッホーブルーイング 
代表取締役社長 井手 直行さん

MMoP(モップ)がある御代田町を中心とした環浅間エリアでで活動する方々の声を通じて、この地の魅力を掘り下げていく本企画「around MMoP」。第3回目は2021年に本社を御代田町に移転した日本を代表するクラフトビールメーカー「ヤッホーブルーイング」代表取締役社長 井手直行さんに、最近の活動や町の持つポテンシャルについてお話を伺いました。

よなよなエール、水曜日のネコ、クラフトザウルス、インドの青鬼、僕ビール君ビール、東京ブラック……ユニークなネーミングと多彩かつ個性的な味わいでクラフトビールの楽しさを広げ、ファンを増やしているヤッホーブルーイング。昨年、佐久醸造所の一部の醸造機能とオフィス機能を御代田町に移しました。

高い天井の広々としたワンフロアの空間からなるオフィスは、内装を社員自身が手がけた明るく、生き生きとした雰囲気が印象的。

日本の地ビール黎明期を牽引してきた「こだわり」

同社の創業は1997年ですが、構想はもっとその数年前からあったと言います。発端は、創業者である星野リゾート代表の星野佳路さんがアメリカ留学時代にパブで飲んだエールビール。忘れられないその美味しさから「エールビールを日本に広めたい!」という願いを持ち続け、1994年酒税法の改正で小規模醸造が可能になったことで叶うことになります。3年後にはビール醸造会社を創業、長年の夢が結実し、理想のビールが完成。井手さんは創業メンバーのひとりで、星野さんに次ぐ2代目社長となりました。

「当時は、大手4社以外にはビールの醸造経験がある人材は見つからず、知見を得るためにアメリカやイギリスの醸造人を招いたりもしました。結局は自前でスタッフをアメリカに留学させてビールづくりを学ばせ、人を育てることから始めました。当時は我々と同じように全国で新しいビールをつくるぞ!という熱い想いを持つ人たちがいらして、雨後の筍のように200社くらいのビール製造会社ができたと思います。いわゆる地ビールブーム。ですが、美味しくない、品質が悪い、ちょっと個性的すぎるといった理由で、ブームはあっという間に終わりましたね」

ブームが去った後もネット通販に活路を見出しながら、美味しいクラフトビールづくりを目指すことを諦めず、スタッフとファンが一緒になってクラフトビールを楽しむ「よなよなエールの超宴」、「よなよなエール 大人の醸造所見学ツアー」などのファンのためのイベントも開催。こうして、ヤッホーブルーイングのファンは増え続けていきました。

開放的なオフィスでユーモアを大切にする企業文化

「弊社の文化に“ユーモアを大事にする”というのがあります。新しい製品をつくるたびにプロジェクトが結成されます。万人ウケはしないけれども、刺さる人にはすごく刺さるデザインやネーミング、味も含めて自由に議論してつくり上げます。この御代田のオフィスの開放的で自由な空間も、いろいろなアイデアが出てくることに貢献しているかもしれませんね」

自社製品がプリントされたTシャツを着た社員同士、ニックネームで呼び合うオープンな社風。井手さんのニックネームは店長をもじった「てんちょ」。名刺の肩書も、よなよなエール“愛の伝道師”兼代表取締役社長となっている。

製品名に合わせた缶のデザインもユーモアたっぷりでインパクトがあるものばかり。

地元の誇りになるような商品づくりや活動に注力

昨年の12月、地域活性化を目的に、長野県・山梨県のセブン-イレブン限定で「山の上ニューイ」を発売。長野・山梨ルーツの国産ホップ「信州早生」「かいこがね」を含む6種類のホップを使ったクラフトビールです。

製品名の「ニューイ」とは、缶に描かれた上半身がカモシカで下半身がライチョウという架空の存在のことで、英語の「NEW」から発想した名前。

「最近では、全国に幅広く展開していくのと同時に、自分たちのお膝元の方たちにも、もっと飲んでいただきたいという想いが強くなってきました。ここ1、2年は『山の上ニューイ』のような製品を出したり、地元に向けたいろんな活動をやっていくことを、積極的に行っています。地元の方たちが誇れる“自分たちのビール”だと思っていただけたら。2021年7月には、地域貢献活動を推進する社内プロジェクト“地元プロジェクト”も発足しています」

自然の中で文化的に暮らせる最良の町、御代田の新たな展開に期待

御代田に住んで、30年。井手さんは「人生でもっとも長くなりましたが、御代田はとても暮らしやすい町、その魅力は増していると実感しています」と語ります。

「最近は人口流入もあって若い方も多くなってきましたし、クリエーターの方などもたくさん移住されていると聞きます。まだ直接のつながりはないのですが、たとえば東京でも間接的に御代田界隈の方とつながることが増えました。軽井沢は良くも悪くも観光地化されていますから、生活者としては御代田がいい。特に僕は自然が好きなので、御代田は自然の中で文化的に暮らせる最高の町だと思っています。この社屋が面している『かりん道路』にはお肉屋さんやパン屋さんなどの美味しい店も増えて、いい感じになってきましたね。MMoPは間違いなく新しい活動が生まれる中心地になるでしょう。文化的な施設が身近にあるとポジティブになるし、イベントや大人向けの写真のワークショップなどで地元のコミュニティができる。住民も、他の地域から来た人も楽しめる、そんな町になるといいと思っています。MMoPで是非、ビールフェスをやって、お互いに協力しながら地元を盛り上げていければ、会社としても、住民としても嬉しいです」

オフィスエリアのとなりにある醸造所。ここには、研究開発拠点の要素もあり、限定ビールなどもつくられている。

施設情報

株式会社ヤッホーブルーイング 御代田醸造所

住所:〒389-0207 長野県御代田町大字馬瀬口1873-4

☎0120-28-4747

※醸造所見学は受け付けておりません。また、ビールの販売はございません。

https://yohobrewing.com/

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